大会長挨拶
67回目の病院・地域精神医学会の開催にあたって
大会長 麻生克郎
今年の11月30日と12月1日に、第67回日本病院・地域精神医学会総会兵庫大会を神戸で開催します。この学会は、過去2回神戸で開催されています。最初は1980年で、その年に医者になったばかりの私が、初めて参加した医学会でした。おそらくその縁で、いつのまにか入会したようです。2回目はちょうど20年前で、中井久夫先生の講演もあり、盛会でした。しかし、私たちの世代は、その後の世代交代と、急性期中心の医療再編成の波を、うまく乗り切れなかったようで、求心力の低下を感じています。
このたび、20年ぶりの兵庫大会を開催することになり、いろいろな人たちに協力を呼びかけましたが、旧知の仲間の反応はさまざまでした。年齢の限界もありますし、種々の事情で、積極的になれない人も多いようでした。一方で、20年前を知らない、若い世代の人たちが、とても積極的に準備会に参加してくれました。その結果、老壮青の結合で、なんとか第67回大会を準備することができそうです。
「シン・セイシンイリョウ」なんてテーマは私には思いつきません。若い人たちによると、この「シン」は多義的なのだそうであります。それぞれに創造的に受け止めてください。一方で、「共生、対話、多様性」は、今の時代に必要な課題として、常識的に付け加えました。鉄の輪をつなぐと鎖ができますが、この「わ」は当然、人の輪のことです。
プログラムとしては、いくつかのシンポジウムやワークショップを準備しています。この学会の流れを継承し、日本の精神医療を見直す企画と、オープンダイアローグ、リカバリーカレッジなどの、新しい取り組みを学ぶ企画を、組み合わせています。大会長講演のヘロインの話や、震災についてのシンポジウムは、地域が災厄と取り組んだ記録でもあります。
会場の「ふたば学舎」は、神戸市長田区の海寄りにあり、海に向かって400mほど歩くと、長田港という漁港に至ります。戦前の1929年から2008年まで、小学校として使われてきました。1995年の震災で火災による甚大な被害を生じた大正筋商店街からは150mです。神戸の下町で戦災と震災を生き延びてきた幸運な建物ですが、今は、「地域の力を結束し・・・連携の拠点となることを目的として」地域の人々のさまざまな活動に使われています。レトロな雰囲気は、気に入っていただけると思いますが、その分、使い勝手や設備の面では、ご迷惑をおかけすることも、あるとは思います。申し訳ございませんが、ご理解、ご協力のほど、お願い申し上げます。